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ESSAY
Turn On

Sometimes I remember this.
 One of my friends, when he was a student of the university, worked
as a driver of The RC
Succesion, a famous a rock'n'roll band in Japan.
 It was in 1979 or 1980 and few months earlier than their big success.
My friend drove his second hand car with Chabo (the lead guitarist) on the
right side seat and with Kiyoshiro (the vocalist) on the backseat to the
concert hall. He said that Chabo talked well and Kiyoshiro didn't talk much.
It was just the same case as a poor student took Keith Richards and Mick
Jagger to their concert by his car in 1964. If you believe or not, it is true.

 After drive, my friend and other helpers of the concert sat on the
far side seats of the hall. There were no paying for their help. But, they
got the seats for free instead of that.
 The rock'n'roll show began. The helpers enjoyed it and were very
excited. After a while, one of the concert crew came and asked them to
rush at the satge. It was the idea to make the calm audience hot. The
helpers loved the band and their music. Why not ? They rushed at the
near side of the hall and began to dance there. It turned the other
audience on. The hall changed into the real excitement.

 I don't regard it as a moonshine. The audience were really excited
with the band's performance from the opening. But, no one turned them on,
and they didn't know how to express it still. And then, the helpers turned
them on. (This is a old story. Japanese nowadays easily scream, shout and
dance at the concert.)
 In the world of comedians, to turn on is very important. I heard a
comedian's words on the TV. He said that when you say the very funny joke,
the audience will never laugh at it, if no one turned them on ahead.

 When the audience see the face of the famous comedian, they are ready
to laugh.
 Everybody may want to be turned on. The words like "I need my burning
love here." or "Give me good information." sound the same to me.
 One of the great works of The Beatles, "Sgt. Pepper's Lonely Hearts
Club Band" ends with the song, "A Day in the Life". And, this song ends
with the phrase," I'd love to turn you on".
 For a long years, I had been believing the phrase was written by John
Lennon. But, I read the John's interview several years ago that said it
was by Paul McCartney. I was surprised at it.

 To turn on.
 It must be the key of life, when you want to enjoy your own life.
I want to turn myself on. I want to turn others on, too. But, it is difficult
to find the switch. Where it is ?
 It might never be found as long as you look for it.


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エッセイ

スイッチ

ときどき、こんな話を思い出す。
 ずっと以前、RCサクセションがまだそれほど有名でなかった頃、当時大学生だ
った僕の友人が彼らバンドの移動係をした。友人はチャボ(仲井戸麗市)を助手席
に乗せ、キヨシロー(忌野清志郎)を後部シートに乗せて運転した。キヨシローは
ほとんどしゃべらず、チャボはよく話したそうだ。あのRCサクセションの二枚看
板を、一介の貧乏大学生が自分のおんぼろ中古車に乗せて走ったなど、現在とな
っては信じがたい光景だが、本当の話だ。「トランジスタ・ラジオ」がヒットす
るすこし以前、1979年か1980年のことだったと思う。

 RCサクセションのメンバーをコンサート会場へ送り届けた友人は、ほかのお手
伝い仲間たちといっしょに会場の最後部の客席にすわっていた。彼らは無料奉仕
でコンサート運営を手伝っていたのだけれど、その見返りに、無料でコンサート
を観られるという特典を得ていた。
 やがて演奏が始まった。当時のオープニングは、先にバンドが演奏を始め、そ
こへ舞台のそでからキヨシローが跳びはねながら登場するというものだったと思
う。友人たちはのっけから興奮し、からだでリズムをとりながら見入っていた。
しばらくすると、彼ら助っ人部隊のところへ、コンサートのスタッフがやってき
て、みんなでステージのほうへ押し寄せてくれないかと頼んできたのだそうだ。
それは、コンサートが盛り上がりにかけるのに窮したスタッフの苦肉の策だった。
友人たち後部座席に陣取った連中はRCサクセションの熱狂的ファンばかりだから
異存のあろうはずもない、二つ返事で立ち上がり、ステージ前へ駆け寄って踊り
狂いはじめた。すなわち、会場は台風が来たような騒ぎになったという。

 僕はそれを単なる「やらせ」とは思わない。RCサクセションの演奏に観客たち
はじゅうぶん興奮していたにちがいない。ただ、その興奮を表すスイッチが入っ
ていなかった。誰かがそのスイッチを入れなければ、いくらエキサイティングな
ステージでも、それはエキサイティングなものとして見えてこない。(この話は、
日本に「慎み」という語が生き残っており、「総立ち」という語がまだなかった
頃の話だ)
 お笑いの世界では、このスイッチということがひじょうに大切らしい。以前、
テレビのトーク番組で、タレントの小堺一機さんが、いくらおもしろいギャグを
飛ばしても、お客に笑いのスイッチが入っていなかったら、何の反応も起きない、
と言っているのを聞いた。そうしたきびしい経験が若手にはいい修業になると言
う人もいるが、自分はそうは思わない、そういう、お客が緊張している状況のス
テージばかりを踏まされて、つぶれていった才能ある優秀なタレントを自分はた
くさん知っている、と。

 たとえば、北野たけしが、あるいは明石家さんまが、目に映るとき、見る側は
すでに笑う準備を済ませている。彼らがちょっと何か言うと、すぐに笑いが起こ
る。しかし、初めて目にするタレントが同じことをしゃべっても、笑うとはかぎ
らない。
「ああ、燃えるような恋がしたい」とか「何かおもしろい話、ない?」とかいうの
も同じことだと思う。誰か、わたしのスイッチを入れてよ、と言っているのだ。
 そういえば、ビートルズの傑作アルバム「サージェント・ペパーズ」の最後を
飾る楽曲「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」の終わりの一節は「きみのスイッチを
入れたい(きみを夢中にさせたい、などとも解釈できる)」だ。僕はこの歌詞につ
いて、長いあいだジョン・レノン作だと思っていたのだけれど、生前ジョンが
「この歌詞の一節はポール・マッカートニーのものだ」と証言しているのを知り、
驚いた。

 スイッチ・オン。毎日を楽しく暮らすため、日々を元気に過ごすために、スイ
ッチを入れることはとても大切だ。自分のスイッチも入れたいし、周囲の人のス
イッチも入れてあげたい。でも、肝心のスイッチのありかがわからない。僕も、
本棚の後ろをさぐったり、ドアーズの「ハートに火をつけて」を聴いたりしてあ
ちこちさがすのだけれど、なかなか見つからない。
 果たしてそれは、さがしているうちは見つからない「青い鳥」だろうか。


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